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40歳女性:右腰から足にかけて痛むが尻の部分が一番痛い。二年前から痛みはあったが、先々月から更にひどくなった。市民病院に二ヵ月間入院し、硬膜下神経ブロックを五回したがいずれも無効であり、手術をしても治るかどうかは不明といわれて来院。 現在は右腰と臀部が痛み下肢は痺れる。この頃から両足先の冷えもきつくなってきた。寝返りをするたびに痛みで目がさめるので安眠もできない。
治療:腰部及び臀部の圧痛点と陽陵泉・風市・肩井に圧痛が著しいので皮膚刺絡をする。
経過:治療四回目から自覚的に効果がわかり希望がでてきた。週に一~二回治療し四ヶ月程で完治。
35歳男性:平成10年暮れより腰痛がひどく左側が尻から足にかけて痺れ痛む。二週間入院して神経ブロックをするもその場はよいがすぐに痛くなる。退院後仕事すると痛みが激しくなったので仕事を休んでいる。
治療:臀部の圧痛点及び志室・陽関の下・承扶・承山・絶骨に圧痛があるので皮膚刺絡をする。
経過:週に一回治療して二ヶ月程で良くなる。その後は月に一回の治療で仕事に励んでいる。
62歳女性:平成11年の二月より右側の腰痛。一週間前から足首のほうまで痛くなり、股関節も痛み寝返りがしにくい。
治療:大腸兪・陽関の下・臀部の圧痛点・殷門・陽陵泉・絶骨の圧痛点に皮膚刺絡をする。
経過:不定期に治療を行い、二ヶ月程で良くなる。
47歳男性:今までは痛いときは外科に行って神経ブロックでしのいできたが、それも効かなくなってきたので来院。 外科では椎間板ヘルニア以外にも頚椎ヘルニアと診断されており全身が痛むと顔をしかめていう。
治療:肩背・腰部・臀部、下肢は膀胱経及び胆経に沿った圧痛点に皮膚刺絡をする。
経過:毎日治療したが、効果がわかってきたのは五回目からで、それ以後は治療間隔を徐々に長くし、一月程で良くなる。
【考察】
症例はすべて医師が椎間板ヘルニアと診断して、治療をおこなったにもかかわらず痛みがとれないために来院したものである。
鍼灸治療には古典的な手法があるが、単純に圧痛点に施しても効くことが多い。とりわけ刺絡ではよく経験するところである。
今回の症例も弁証はせず、圧痛点を皮膚刺絡しただけの素人療法のようであるがすべてに実によく奏効している。古典的な治療を否定しているのではないが、刺絡の考え方は陰陽虚実以前のもっと原始的なもの、例えば世界の伝統医学に共通する「滞りをなくす」という単純な考えのほうが理解しやすいのではないか。そして刺絡の後に諸派の流儀で調整すれば更に効果的である。
椎間板ヘルニアの治療をいくらか経験すると、圧痛や硬結のある筋肉を軟らげ、滞りをなくすことの重要さがわかってくる。これは椎間板ヘルニアだけに限らず、ほとんどの疾患に於いてもいえることで、例えば局所の患部を手術等で除去しても、周囲の滞りを改善しないことには再発することが多い。刺絡鍼法の場合は、局所治療だけではなく、肩背・腰などの渋滞しやすい処をも治療することが多いので、太極療法となり再発がしにくい。