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刺絡(しらく)とは

刺絡は太古から世界各地で行われていた医術である。日本においては一部では違法と誤解されているようであるが、鍼灸師が行える鍼法の一方法である。一部の鍼灸学校や医道の日本社が違法としているのは、実は戦前の古い法律の解釈であって、「瀉血及び電気・烙鉄の類」は禁止とされていたが、戦後に改正され、括弧内の文章は削除された。現在、電気治療や灸頭針は違法でないのと同様に刺絡も違法ではない。驚くかもしれないが、戦前は刺絡の禁止だけでなく、電気治療や灸頭針も禁止されていた。

刺絡の特徴としては速効性があり効果の持続性も大きい。また圧痛点や硬結を目標とした局所治療であっても絶大な効果を発揮する。特に救急時に井穴刺絡は重要である。現在の鍼灸師が救急を扱うことはほとんどないが、身内などの急変の場合に救急車を呼ぶにしても、救急車を待つ間や、一緒に乗り込んで井穴刺絡を行うべきである。急な時にうろたえないためにも普段から井穴刺絡を学んでおく必要もある。

刺絡は、井穴刺絡・皮膚刺絡・細絡刺絡に分類される。

井穴刺絡

指端は痛みに過敏な処であるで切皮の深さは0.5mmくらいにして搾り出す。 糖尿病に使う採血針を使うと容易であり、痛みも少ない。
目標:指先の皮膚の荒れ・爪甲の色調の異常・腫脹・爪の周囲が赤黒い・指先のささくれや割れ・手の強ばりや痺れなど。
井穴刺絡 井穴刺絡

井穴刺絡は局部の指だけでなく、体の各所に影響する。一般に手の井穴は上半身、足の井穴は全身に作用する。また急性疾患にも著効のあることが多い。

両手十指の井穴刺絡をする場合、片側の手が終わった時点で左右の手を同時に握ってみると、治療したほうの手指が軽くなっているかがわかる。また肘や肩の圧痛も変化する。井穴である指端から瘀血を除去すると、手・腕・肩・上半身すべての血液が流動し上半身だけでなく全身に影響する結果である。

古来より救急の事態には井穴刺絡がよく奏効するのは有名であるが、急激な症状が即座に解消するのは経験する度に不思議に感じる。 耳鼻科疾患や眼科疾患、頭痛など、首から上の急性症状にも奏効するので試してほしい。乳児や小児のあらゆる急性症状に親指からの井穴刺絡が奏効するのは古今東西知られるところである。

興味深いのは下の親知らずの抜歯の際に井穴刺絡を行うと、術後の痛みや腫れが著しく軽減される。方法は患う側の指の親指と人差し指から、術前日と術後三日間井穴刺絡を行う。是非追試願いたい。喜ばれること間違いなし!

参考:井穴刺絡まとめ

皮膚刺絡

皮膚刺絡:眼球と動脈上以外はどこでもできる。1,5mmくらいの深さで1~6箇所切皮し、手で搾り出すか、吸角をかける。

目標:圧痛・緊張・腫脹・硬結・水泡・皮膚色の異常など。

井穴刺絡 井穴刺絡

常用部位
○攅竹:1~3箇所切皮し、手で絞る。即座に目の疲れやごろごろ感が改善する。各種眼科疾患にも有効。花粉症にもよい。上星を併用することも多い。
○肩背・腰部は圧痛・硬結を目標として、5~6箇所切皮して吸角をかける。
○後頭部・首:圧痛・硬結や赤くなっている処に行う。

皮膚の色は血液の色によるところが大きい。古傷の痕や銭湯で高齢者の腰部を見ると黒くなっているがこれは血液の色である。治療をするにつれて血色が改善していく。同時にこれらの部分は皮膚表面が鬱血してぶよぶよとしていたり、知覚麻痺している場合が多い。これらも治療を重ねることによって改善される。 治療をすると血液がゴマ粒程度しか出ない場合もあるが、こういう場合は重症である。治療回数を重ねることによって出血するようになってくる。こういうことは通常の鍼灸治療では判断できないことである。

細絡刺絡

毛細血管の怒張しているものを1~2mm刺し、吸角をかける。太いものや青色の血管を避け、極小で明るいピンク色で、押してみると色がなくなるものが治療効果が大きい。

目標:細絡は肩・腰・膝周囲などによく現れる。集合してある場合は皮膚の色の変化と見られることもあるが、押してみると退色する。細絡は血液がダムのように渋滞している状態であり、治療によりかなりの出血を見ることもあるが、諸症状が急激に改善される。 治療経験の少ない者は怒張した静脈を細絡として認識していることもあるが、静脈を刺すと著しい内出血を起こすこともあるので間違いを犯さないよう注意が必要である。

細絡
注 意 点

感染に注意し、器具(三稜鍼・吸い玉)の厳重な滅菌が必要。血液の色・性状などの変化に留意して取血し過ぎない。三稜鍼の刃先を出し過ぎない。1~2㍉程度で十分である。刺絡学会では塩野製作所(03ー3910ー7835)の三稜鍼を採用している。刃が薄く、ステンレス性なので滅菌が容易である。

刺絡に関する推薦図書
肩凝りと刺絡

肩凝りと頭部の鬱血には刺絡治療が最も効果的でまた重要である。肩凝りが甚だしくなると脳への血行の渋滞が起こり、頭部は鬱血状態となる。頭部の鬱血の臨床所見は次のようなものである。

これらの症状は子供では見ることはなく、四十歳を過ぎた人に観察されることが多い。またこういう症状があっても肩凝り感がない人もいるが、より一層重症のものである。

肩凝りや鬱血は現代医学では病気とはされず、検査にもでないので軽く思われがちだが、頭部の鬱血があると、脳梗塞や認知症になる可能性も高くなる。普段から肩の刺絡治療を行い、頭部のめぐりをよくする必要がある。

刺絡治療はこれからの高齢化社会にも必要かつ有意義な治療法と感じる。